ぜん》として黙つてゐると、一人の賢さうな男が出て来てかう申しました。
「恐れながら、殿様には四つの玉を容《い》れた錦《にしき》の袋をお持ちでございますか。」
万作は何と言つて宜《よ》いか知れないので黙つて最前爺さんに貰《もら》つた袋を見せました。
「はゝあ、そのお宝を持つてお出でならば、あなたは私共の国の殿様に相違ございません。では一寸《ちよつと》御尋《おたづ》ね致したい事がございます。私共の国の先の殿様は大層悪い殿様で無茶苦茶に高い税金を取られまして、もう国中は貧乏になつてしまひました。これから百姓は毎月何程の税金をお納め申す事に致しませうか。」
「十二銭!」と万作は元気よく言ひました。
「武士《さむらひ》や職人や商人《あきんど》は何程|宛《づつ》で宜《よろ》しうございますか。」
「十二銭!」と又元気よく言ひました。
四
一同は手を拍《う》つて喜びました。
「皆《みん》なが十二銭|宛《づつ》だとさ、税金を安くして高低《たかひく》なしにして下すつた。本当に公平な賢い殿様だ。」
かう云つて多勢の人々は旗を振つて万歳万歳と言ひました。
万作はすぐ立派な着物を着せられて、
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