山の花を持って来て下さいました。』という。
 一つの教室に可愛い子供が勉強している。そのうちの五六人を先生の机のぐるりに集めて、立ちながら問答している。四方の壁を黒板にして、そこへ生徒が総出になって運算を書きつけている。先生が来て直してくれるまで、自分の書いた問題の下に立っている。誰がどんなに間違っているか、いないかは全級の生徒に一目瞭然である。
 次の教場ではよく肥えた女教師が、生徒の勉強している机の上に、デッカイお尻を据えて平気で教えている。かと思えば、生徒は生徒で其のお尻のかげで、チョコレートを頬ばりながら先生の講義をきいている。神経質らしい校長のお婆あさんが巡視に来ても、先生のお尻は机の上から一分も一寸も離れない。生徒の教科書をのぞくと、アメリカンヒストリーである。丁度其日習っている所にザ・レエボアムーヴメントの見出しがあった。先生は内地人と、外国人との労働競争の事について詳しく教えている。
 小学生に対して労働運動、労働問題を教えている現象を見た私は、恐るべきものはアメリカの軍隊でなく、此の教科書だと思った。しかも、それを習っているのは、日本から、支那から、ポルトガルから、ス
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