痍のあと
長塚節
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)大子《だいご》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)勾[#「勾」は底本では「※[#「曷−日」、310−10]」]配も
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例))どう/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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豆粒位な痍のあとがある。これは予が十八の秋はじめて長途の旅行をした時の形見であるが今でも深更まで眠れない時などには考へ出して恐ろしい感じのすることもある。予は其頃まで奧州の白河抔といふと唯遠い所と計り思つて居たのであつたが、ふと陸地測量部の地圖を披いて案外に近い所なのに驚いた。それからといふもの旅行がして見たくて堪らないので母に二週間ばかりの旅費を貰つて出掛けた。水戸から久慈郡へ拔けて蒟蒻粉で有名な大子《だいご》の町から折れて下野へ出た。或る山の小村で夜を明して翌日那須野を横斷して其日は一日のうちに鹽原の奧まで行つた。何を見ても愉快であつたが、殊に那須野
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