の身の破綻であるやうに思はれて窃に其処分を考究した。おいよさんは時々朝から臥せることがある。私は心配になるからだらうと思つてそつと枕元に行つて見るとおいよさんは其一塊肉のために私に訴へるのであつた。さうしてかうなるのもあなたが悪いのだと私を責めることもあつた。けれどもおいよさんの臥せつて居ることは例の加減が悪いからだらうと人は思つて居るのだからそんな疑を抱かれることはないと私は思つて居た。私はそれとはなしにそこらで懐胎した女の思ひ切つた身の処分法を聞いた。其度毎に私はおいよさんに告げて其ぢつと目を据ゑて身にしみた聞きやうをするのを見た。一ケ月はまた経過した。けれどもおいよさんの体は常態には復さなかつた。其内に田舎の正月が近づいて来た。おいよさんは正月になつたら母の郷里へ行つて来たいといつた。おいよさんは或日人の居らぬ処で私に銭をくれといつた。それは小遣としては少し多過ぎた請求であつたが、衣服一枚拵へたいのだといふのを聞いてそれにしては余りに少ないのではないかと思つた。私はせがまれては快くはなかつた。然し物蔭に立つてぢつとおいよさんの目を見る時は変な心持になつて畢ふので私は此の請求もすぐ
前へ
次へ
全66ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング