負つて居るので何といふものかと聞いたら、此は「バンドリ」といつて此を當てゝ置けばどんな荷物でも背中が痛くないのだといつた。暫く噺をして居るうちにふと良寛上人の噺が出た。良寛さんといふ人は墓から椀を拾うて來たので良寛さんそれは死人の椀ぢやありませんかといつたら洗うてたべてるといつたといひますといふ樣なことであつた。一人の老人は顏を地面へ擦りつけるやうにして燻ぶる火を吹いて居る。それは枝豆を焦がしながら燒いて居るのであつた。
彌彦から吉田へ出る間は稻刈りがはじまつて居る。路傍には榛の木が立ちならんで居る。其榛の木へ幾筋となく繩を引つ張つて其繩へ小束を掛ける。それ故恰かも塀と塀との間を行く樣になつてる所がある。燕といふ所で大道へ店を出して果物を商つて居る女があつた。柿があるので甘いかと聞いたら古い樹でなければまだ今頃はコンゲナ柿は出ない。ホンネ、カンドを甞めるやうだといつた。甘露のやうだといふのである。燕から渡しを越えて長い堤をぶら/\とカンドの樣だといふ柿を味ひつゝ歩いた。長い堤が盡きると又川がある。此は二瀬になつた信濃川の本流である。此所には長橋が架設してある。橋を越えれば三條の町にな
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