濱の冬
長塚節
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)※[#「魚+是」、第4水準2−93−60]《ごまめ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「魚+是」、第4水準2−93−60]《ごまめ》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例))ちやら/\
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冬の日のことである。鰯の漁が見たかつたので知人の案内状を持つて九十九里の濱の網主のもとへ行つた。主人はチヨン髷の五十幾つかに見える。丁度まくれた栗の落葉が轉つて行くやうだといへば適切で物に少しの滯りもない人である。余の初對面の挨拶が濟むと一寸來て見ないかといふので跟いて行つて見たら、二三軒さきで棟上げの式を行ふ所なので丁度餅や小錢を撒いて居た。主人はいきなりいよつと呶鳴つて大勢の中へ飛び込んで揉まれながら小錢を拾つた。さうして左の掌へ五文六文と勘定をしてちやら/\鳴しながら逢ふ人に見せびらかしては大口あいてはゝあと笑つて居る。こんな無造作な主人であるから居るのにちつと
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