自分の食料までも減じて見ると、立派な體格を有つた一人の働きが實際何程にも當らないのであります。然し彼等は四季を通じて殆んど田畑の仕事にばかり屈託して居るのですから衣類の節約が極端に行はれて居ます。それから食料というても、第一には鹽を買ふ外には自分の手で作つた物で十分に滿足することが出來ます。それからどんな姿《なり》にでも雨戸が有れば住むに事を缺くことはないのであります。
恁《こ》んな状態でありますから消極的な身の持方をして居れば案外に苦勞のない生活がして行けるのであります。彼等には幸にも非望を懷くものはありません。彼等の身體が鍛錬された鐵のやうである如く、彼等の心にも頑強な或物があつて彼等を抑制して居て呉れるのであります。
庄次も恁《こ》ういふ小作人の仲間で殊に心掛の慥な人間でありました。彼の老《としよ》つた父は毎年夏の仕事には屹度一枚の瓜畑を作りました。其の畑からの收益で一年間の家内の小遣錢に充てるのが例でありました。固より面倒な丹精が要《い》る代りには蔬菜の栽培程百姓の仕事として利益なものはないのであります。其内でも瓜類の栽培は又格別なものであります。前の年の秋からの心掛で麥の
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