《ひじやう》に昂進《かうしん》した。液體《えきたい》の一|滴《てき》をも攝取《せつしゆ》することが出來《でき》ないにも拘《かゝは》らず、亂《みだ》れた髮《かみ》の毛《け》毎《ごと》に傳《つた》ひて落《おち》るかと思《おも》ふやうに汗《あせ》が玉《たま》をなして垂《た》れた。蒲團《ふとん》を濕《ぬら》す汗《あせ》の臭《くさみ》が鼻《はな》を衝《つ》いた。
「勘次《かんじ》さん此處《ここ》に居《ゐ》てくろうよ」お品《しな》は苦《くる》しい内《うち》にも只管《ひたすら》勘次《かんじ》を慕《した》つた。
「おうよ、こゝに居《ゐ》たよ、何處《どこ》へも行《ゆき》やしねえよ」勘次《かんじ》は其《その》度《たび》に耳《みゝ》へ口《くち》を當《あて》ていつた。
「勘次《かんじ》さん」お品《しな》は又《また》喚《よ》んた。
「怎的《どう》したよ」勘次《かんじ》のいつたのはお品《しな》に通《つう》じなかつたのか
「おとつゝあ、俺《お》らとつてもなあ」とお品《しな》は少時《しばし》間《あひだ》を措《お》いて、さうして勘次《かんじ》の手《て》を執《と》つた。
「おつう汝《われ》はなあ、よき[#「よき」に傍点]
前へ 次へ
全956ページ中94ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング