とするやうに間斷《かんだん》なく騷《さわ》いだ。霧《きり》は悲慘《みじめ》な凡《すべ》ての物《もの》を互《たがひ》に知《し》らせまいとして吹《ふ》き立《た》ち/\數《すう》十|間《けん》の距離《きより》に於《おい》ては其《そ》の物體《ぶつたい》の形状《けいじやう》をも明《あきら》かに示《しめ》さない。雜木林《ざふきばやし》の樹木《じゆもく》は開墾地《かいこんち》の周圍《しうゐ》にも混亂《こんらん》した。然《しか》し勘次《かんじ》が目《め》を放《はな》つて居《ゐ》るのは足《あし》の爪先《つまさき》二三|尺《じやく》の、今《いま》唐鍬《たうぐは》を以《もつ》て伐去《きりさ》つて遙《はるか》に後《うしろ》へ引《ひ》いてそつと棄《す》てた趾《あと》の一|點《てん》である。埃《ほこり》は土《つち》に幾《いく》らでも濕《うるほ》ひを持《も》つた彼《かれ》の足《あし》もとからは立《た》たなかつた。おつぎは勘次《かんじ》が起《おこ》した塊《かたまり》を一つ/\に萬能《まんのう》の脊《せ》で叩《たゝ》いてさらりと解《ほぐ》して平《たひら》にならして居《ゐ》る。輕鬆《けいしよう》な土《つち》から凝集《こゞ
前へ 次へ
全956ページ中838ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング