う》すべき水分《すゐぶん》がそれ程《ほど》蒸發《じようはつ》し盡《つく》しても其《そ》の吹《ふ》き渡《わた》る間《あひだ》は西風《にしかぜ》は決《けつ》して空《そら》に一|滴《てき》の雨《あめ》さへ催《もよほ》させぬ。それでも有繋《さすが》に深《ふか》く水《みづ》を藏《ざう》して居《ゐ》る土《つち》は垢《あか》の如《ごと》き表皮《へうひ》のみを掻《か》き拂《はら》つて行《ゆ》く疾風《しつぷう》の爲《ため》には容易《ようい》に其《そ》の力《ちから》を失《うしな》はないで、夜《よ》が更《ふ》ければ幾《いく》らでも空氣中《くうきちう》に保《たも》たれた水分《すゐぶん》を微細《びさい》に結晶《けつしやう》させて一|杯《ぱい》に白《しろ》く引《ひ》きつける。土《つち》が徹宵《よつぴて》さういふ作用《さよう》を營《いとな》んだばかりに、日《ひ》は拂曉《あけがた》の空《そら》から横《よこ》にさうして斜《なゝめ》に其《そ》の霜《しも》を解《と》かして、西風《にしかぜ》は直《たゞち》にそれを乾《かわ》かして残酷《ざんこく》に表土《へうど》の埃《ほこり》を空中《くうちう》に吹《ふ》き捲《ま》くる。其《そ》
前へ
次へ
全956ページ中836ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング