で只《たゞ》靜《しづ》かであつた。田圃《たんぼ》を透《とほ》して林《はやし》の間《あひだ》から見《み》える其《その》遠《とほ》い山々《やま/\》の雲《くも》は稍《やゝ》薄《うす》くなつて空《そら》を濁《にご》して居《ゐ》た。軈《やが》て雜木林《ざふきばやし》の枝頭《えださき》が少《すこ》し動《うご》いたと思《おも》つたらごうつといふ響《ひゞき》が勘次《かんじ》の耳《みゝ》に鳴《な》つた。巨人《きよじん》の脚《あし》が逼《せま》つたのである。彼《かれ》はむつと思《おも》はず呼吸《こきふ》が切迫《せつぱく》した。
毎日《まいにち》吹《ふ》き渡《わた》る西風《にしかぜ》は乾燥《かんさう》しつゝある凡《すべ》ての物《もの》を更《さら》に乾燥《かんさう》させねば止《や》まない。雨《あめ》が稀《まれ》にしんみりと降《ふ》つても西風《にしかぜ》は朝《あさ》から一|日《にち》青《あを》い常緑木《ときはぎ》の葉《は》をも泥《どろ》の中《なか》へ拗切《ちぎ》つて撒布《まきち》らす程《ほど》吹《ふ》き募《つの》れば、それだけで土《つち》はもう殆《ほと》んど乾《かわ》かされるのである。土《つち》が保有《ほい
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