》いてあるので、どんな陰《かげ》でも其《そ》の身《み》を託《たく》する場所《ばしよ》を求《もと》めてころ/\と轉《ころ》がつて行《い》つては、自分《じぶん》の伴侶《なかま》が一つに相《あひ》倚《よ》り相《あひ》抱《いだ》いて微風《びふう》にさへ絶《た》えず響《ひゞき》を立《た》てゝ戰慄《せんりつ》しつゝあるのである。
 勘次《かんじ》は斯《か》ういふ櫟《くぬぎ》の木《き》を植《う》ゑて林《はやし》を造《つく》るべき土地《とち》の開墾《かいこん》をする爲《ため》にもう幾年《いくねん》といふ間《あひだ》雇《やと》はれて其《そ》の力《ちから》を竭《つく》した。彼《かれ》は漸《やうや》く林相《りんさう》を形《かたち》づくつて來《き》た櫟林《くぬぎばやし》に沿《そ》うて田圃《たんぼ》を越《こ》えて走《はし》つた。田圃《たんぼ》の鴫《しぎ》が何《なに》に驚《おどろ》いたかきゝと鳴《な》いて、刈株《かりかぶ》を掠《かす》めるやうにして慌《あわ》てゝ飛《とん》で行《いつ》た。さうして後《のち》は白《しろ》く閉《とざ》した氷《こほり》が時々《ときどき》ぴり/\と鳴《なつ》てしやり/\と壞《こは》れるのみ
前へ 次へ
全956ページ中834ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング