ういつた。卯平《うへい》は目《め》を蹙《しが》めた。彼《かれ》は闇夜《あんや》にずんずんと運《はこ》んだ足《あし》が急《きふ》に窪《くぼ》みを踏《ふ》んでがくりと調子《てうし》が狂《くる》つたやうな容子《ようす》であつた。
「明日《あした》、要《え》れば出《だ》してやんびやな、爺等《ぢいら》どうせ夜《よる》なんぞ要《え》りやすめえしなあ」おつぎは又《また》賺《すか》すやうにいつた。卯平《うへい》はもう反覆《くりかへ》していはなかつた。彼《かれ》は只《たゞ》其《その》癖《くせ》の舌《した》を鳴《な》らしてごくりと唾《つば》を嚥《の》むのみであつた。次《つぎ》の朝《あさ》に成《な》つて酒氣《しゆき》が悉《こと/″\》く彼《かれ》の身體《からだ》から發散《はつさん》し盡《つく》したら彼《かれ》は平生《へいぜい》の卯平《うへい》であつた。

         二四

 卯平《うへい》は決《けつ》して惡人《あくにん》ではなかつた。彼《かれ》は性來《せいらい》嚴疊《がんでふ》で大《おほ》きな身體《からだ》であつたけれど、其《そ》の蹙《しか》めたやうな目《め》には不斷《ふだん》に何處《どこ》か軟《や
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