》の邊《あたり》は暫《しばら》く騷《さわ》ぎが止《や》まなかつた。卯平《うへい》の心《こゝろ》も假令《たとひ》一|時的《じてき》でも周圍《しうゐ》の刺戟《しげき》から幾分《いくぶん》の力《ちから》を添《そへ》られて或《ある》勢《いきほ》ひを恢復《くわいふく》したのであつた。
「確乎《しつかり》しろえ、えゝから」小柄《こがら》な爺《ぢい》さんは別《わか》れる時《とき》復《また》呶鳴《どな》つた。卯平《うへい》の足《あし》もとは稍《やゝ》力《ちから》づいて見《み》えて居《ゐ》た。
 卯平《うへい》は念佛寮《ねんぶつれう》から歸《かへ》つて來《き》た時《とき》どかりと火鉢《ひばち》の前《まへ》に坐《すわ》つた。彼《かれ》は勢《いきほ》ひづけられて居《ゐ》た。勘次《かんじ》は例《れい》の如《ごと》く遠《とほ》ざかつた。
「おつう、米《こめ》と挽割麥《ひきわり》出《だ》せ」卯平《うへい》は座《ざ》に就《つ》くと突然《とつぜん》かういつた。
「夥多《みつしら》出《だ》せ」間《あひだ》を措《お》いて又《また》いつた。
「何《なに》すんでえ、爺《ぢい》は」おつぎはそれを輕《かる》く受《うけ》て斯《か》
前へ 次へ
全956ページ中808ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング