爺《ぢい》さんは激《はげ》しくさうして例《れい》の自慢《じまん》をいひ續《つゞ》けた。
「さうだこと云《ゆ》つたつておめえ、以前《めえかた》から他人《ひと》のこと切《き》つたこともねえ癖《くせ》に」側《そば》から服裝《みなり》の好《い》い婆《ばあ》さんが貶《くさ》していつた。
「そんだが、此《こ》の年齡《とし》になつて懲役《ちようえき》に行《え》ぐな厭《や》よ俺《お》れも」爺《ぢい》さんはずつと垂《た》れた頭《あたま》を手《て》で抑《おさ》へて笑《わら》ひこけた。婆《ばあ》さん等《ら》もどつと哄笑《どよめ》いた。
「勘次等《かんじら》、そん時《とき》から俺《お》れた口《くち》も利《き》かねえや」卯平《うへい》は他人《ひと》には頓着《とんぢやく》なしにかういつて其《そ》の舌《した》を鳴《な》らして唾《つば》を嚥《の》んだ。
「口《くち》利《き》かねえ、そんだら口《くち》兩方《りやうはう》へふん裂《ぜ》えてやれ、さあ利《き》くか利《き》かねえかと斯《か》うだ」小柄《こがら》な爺《ぢい》さんは自分《じぶん》の口《くち》を兩手《りやうて》の指《ゆび》でぐつと擴《ひろ》げていつた、圍爐裏《ゐろり
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