94−57]《そんな》におめえ、畜生《ちきしやう》だなんて、手《て》もとも見《み》もしねえで」と先刻《さつき》の服裝《みなり》の好《い》い婆《ばあ》さんが窘《たしな》めるやうにいつた。
「いやツ、お婆《ばあ》さん、手《て》もと見《み》ねえつたつてさうに極《きま》つてんだから、いや本當《ほんたう》だよ。俺《お》ら嘘《ちく》いふな嫌《きれ》えだから、そんだがあの阿魔《あま》もづう/\しい阿魔《あま》だ、此間《こねえだ》なんざおつかこた思《おも》ひ出《だ》さねえかつちつたら、思《おも》ひ出《だ》さねえなんて吐《ぬ》かしやがつて」爺《ぢい》さんは又《また》乘地《のりぢ》に成《な》つた。
「ありやあそれ、俺《お》れがにやえゝんだよ、隨分《ずゐぶん》辛《つれ》え目《め》に逢《あ》つたから、お袋《ふくろ》こと思《ま》あねえこたねえが、悉皆《みんな》揶揄《からけ》え/\したからそんでさうだこといふやうん成《な》つたんだな、有繋《まさか》あれだつて困《こま》つちや居《ゐ》んだから、何《なん》ちつたつてあれにや罪《つみや》あねえよ」最後《さいご》の一|句《く》をすつと低《ひく》くいつて彼《かれ》は漸《やう
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