《ぶんきうせん》だの青錢《あをせん》だのつちうのが薩張《さつぱり》出《で》なくなつちやつてな、それから何處《どこ》へ行《い》つても恁《かう》して置《お》くんだ」商人《あきんど》がぼて笊《ざる》から燐寸《マツチ》を出《だ》さうとすると
「又《また》燐寸《マツチ》ぢやあんめえ」お品《しな》は微笑《びせう》した。
「こまけえ勘定《かんぢやう》にや近頃《ちかごろ》燐寸《マツチ》と極《き》めて置《お》くんだが、何處《どこ》の商人《あきんど》もさうのやうだな」商人《あきんど》は卵《たまご》を笊《ざる》へ入《い》れながらいひ續《つゞ》けた。
「酷《ひど》く安《やす》くなつちやつたな、寒《さむ》く成《な》つちや保存《もち》がえゝのに却《けえつ》て安《やす》いつちうんだから丸《まる》で反對《あべこべ》になつちやつたんだな」勘次《かんじ》は青菜《あをな》を桶《をけ》へ並《なら》べつゝいつた。
「上海《シヤンハイ》がへえつちやぐつと値《ね》が下《さが》つちやつてな、あつちぢやどれ程《ほど》安《やす》いもんだかよ、品《しな》が少《すく》ねえ時《とき》に安《やす》くなるつちうんだから商人《あきんど》も儲《まう》
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