けえからな」
「鹽《しほ》がくつゝいてつから鹽《しほ》の目方《めかた》もあんぞ」勘次《かんじ》は側《そば》からいつて笑《わら》つた。商人《あきんど》は平然《へいぜん》として居《ゐ》る。
「五|錢《せん》五|厘《りん》六|毛《まう》幾《いく》らつていふんだ、さうすつと先刻《さつき》のは幾《いく》らの勘定《かんぢやう》だつけな」
「四十六|錢《せん》八|厘《りん》幾《いく》らとか言《いつ》たつけな」お品《しな》は直《すぐ》にいつた。
「それぢや差引《さしひき》四十一|錢《せん》三|厘《りん》小端《こばし》か、こつちのおつかさま自分《じぶん》でも商《あきねえ》してつから記憶《おべえ》がえゝやな」商人《あきんど》は十露盤《そろばん》を持《も》つて
「どうしたえ、鹽梅《あんべえ》でも惡《わり》いやうだが風邪《かぜ》でも引《ひ》いたんぢやあんめえ」といつた。
「うむ、少《すこ》し惡《わる》くつて仕《し》やうねえのよ」お品《しな》はいつて
「小端《こばし》は幾《いく》らになんでえ」と更《さら》に聞《き》いた。
「勘定《かんぢやう》にや成《な》んねえなどうも、近頃《ちかごろ》は仕《し》やうねえよ文久錢
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