からねえ」天秤《てんびん》を擔《かつ》いで彼《かれ》は又《また》更《さら》に
「相場《さうば》が下《さ》げ氣味《ぎみ》の時《とき》にやうつかりすつと損物《そんもの》だかんな、なんでも百姓《ひやくしやう》して穀《こく》積《つ》んで置《お》く者《もの》が一|等《とう》だよ、卵拾《たまごひろ》ひもなあ、赤痢《せきり》でも流行《はや》つて來《き》てな、看護婦《かんごふ》だの巡査《じゆんさ》だの役場員《やくばゐん》だのつちう奴等《やつら》病人《びやうにん》の口《くち》でもひねつてみつしり喰《く》つてゞも呉《く》んなくつちや商人《あきんど》は駄目《だめ》だよ」商人《あきんど》は行《ゆ》き掛《か》けて
「また溜《た》めて置《お》いておくんなせえ」今度《こんど》は少《すこ》し叮寧《ていねい》にいひ捨《す》てゝ去《さ》つた。
 お品《しな》は錢《ぜに》を蒲團《ふとん》の下《した》の巾着《きんちやく》へ入《い》れた。さうして※[#「竹かんむり/(目+目)/隻」、第4水準2−83−82]棚《わくだな》からまるめ[#「まるめ」に傍点]箱を卸《おろ》して三つの白《しろ》い卵《たまご》を入《い》れた。以前《いぜん
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