うせつ》に感《かん》ずる程度《ていど》の相違《さうゐ》はあるにしても、死《し》の問題《もんだい》に苦《くる》しめられて居《ゐ》るのは事實《じじつ》である。卯平《うへい》の心《こゝろ》にも同《おな》じく死《し》の觀念《くわんねん》が止《や》まず往來《わうらい》した。
彼《かれ》は其《その》手先《てさき》の自由《じいう》を失《うしな》うた時《とき》自棄《やけ》の心《こゝろ》から彼《かれ》の風呂敷包《ふろしきづゝみ》を解《と》いた。野田《のだ》に居《ゐ》た頃《ころ》主人《しゆじん》や又《また》は主人《しゆじん》の用《よう》での出先《でさき》から貰《もら》つた幾筋《いくすぢ》の手拭《てぬぐひ》を繼《つ》ぎ合《あは》せて拵《こしら》へた浴衣《ゆかた》を出《だ》した。清潔好《きれいずき》な彼《かれ》には派手《はで》な手拭《てぬぐひ》の模樣《もやう》が當時《たうじ》矜《ほこり》の一《ひと》つであつた。彼《かれ》はもう自分《じぶん》の心《こゝろ》を苛《いぢ》めてやるやうな心持《こゝろもち》で目欲《めぼ》しい物《もの》を漸次《だん/\》に質入《しちいれ》した。彼《かれ》は眼前《がんぜん》に氷《こほり》
前へ
次へ
全956ページ中773ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング