《まゝ》であつた。卯平《うへい》はそれでも種々《いろいろ》な百姓料理《ひやくしやうれうり》の鹽辛《しほから》い重箱《ぢゆうばこ》へ箸《はし》をつけて近頃《ちかごろ》になく快《こゝろ》よかつた。彼《かれ》は腹《はら》に一|杯《ぱい》になる迄《まで》には、缺《か》けた齒齦《はぐき》で噛《か》んで嚥下《のみくだ》して、更《さら》に次《つぎ》の箸《はし》が口《くち》まで來《く》る其《そ》の悠長《いうちやう》な手《て》の運動《うんどう》が待遠《まちどほ》で口腔《こうかう》の粘膜《ねんまく》からは自然《しぜん》に薄《うす》い水《みづ》のやうな唾液《つば》の湧《わ》いて出《で》るのを抑《おさ》へることが出來《でき》ない程《ほど》であつた。
 威勢《ゐせい》よく成《な》つた老人等《としよりら》は赤《あか》い胴《どう》の太鼓《たいこ》を首筋《くびすぢ》から胸《むね》へ吊《つ》つて、だらり/\と叩《たゝ》いて先《さき》に立《た》つと足《あし》もと手《て》もと節制《だらし》なくなつた凡《すべ》てが後《あと》から/\と、殊《こと》に婆《ばあ》さん等《ら》は騷《さわ》ぎながら跟《つい》て出《で》る。軒端《のきば
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