け》の光《ひかり》はまだ行《ゆ》き渡《わた》らぬ。薄《うす》い蒲團《ふとん》にくるまつて居《ゐ》る百姓等《ひやくしやうら》の肌膚《はだ》には寒冷《かんれい》の氣《き》がしみ/″\と透《とほ》つて、睡眠《ねむり》に落《お》ちて居《ゐ》ながら、凡《すべ》てが顎《あご》を掩《おほ》ふまでは無意識《むいしき》に蒲團《ふとん》の端《はし》を引《ひ》いてもぢ/\と動《うご》く頃《ころ》であつた。かん/\と凍《こほ》つて鳴《な》る鉦《かね》の音《ね》が沈《しづ》んだ村落《むら》の空氣《くうき》に響《ひゞ》き渡《わた》つた。希望《きばう》と娯樂《ごらく》とに唆《そゝの》かされて待《ま》つて居《ゐ》た老人等《としよりら》は悉皆《みんな》、其《そ》の左《ひだり》の手《て》に提《さ》げて撞木《しゆもく》で叩《たゝ》いて居《ゐ》る鉦《かね》の響《ひびき》を後《おく》れるな急《いそ》げ/\と耳《みゝ》に聞《き》いた。老人《としより》は何處《どこ》の家《うち》からも一|齊《もい》に念佛寮《ねんぶつれう》を指《さ》して集《あつま》つた。彼等《かれら》は孰《いづ》れも、まだぐつすりと眠《ねむ》つて居《ゐ》る家族《かぞ
前へ 次へ
全956ページ中733ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング