れなかつたのみでなく、彼《かれ》は寧《むし》ろ仲裁者《ちうさいしや》の地位《ちゐ》に立《た》たねば成《な》らぬことに幾分《いくぶん》の迷惑《めいわく》を感《かん》じた。勘次《かんじ》は決《けつ》して仲裁《ちうさい》を依頼《いらい》しなかつた。彼《かれ》は只《たゞ》自分《じぶん》の調子《てうし》に乘《の》つて噺《はなし》をしてくれることに滿足《まんぞく》を求《もと》めようとしたのみであつた。然《しか》しそれは悉《こと/″\》く徒勞《むだ》であつた。勘次《かんじ》は羞恥《しうち》と恐怖《きようふ》と憤懣《ふんまん》との情《じやう》を沸《わか》したが夫《それ》でも薄弱《はくじやく》な彼《かれ》は、それを僻《ひが》んだ目《め》に表現《へうげん》して逢《あ》ふ人《ひと》毎《ごと》に同情《どうじやう》してくれと強《し》ふるが如《ごと》く見《み》えるのみであつた。百姓《ひやくしやう》の凡《すべ》ては彼《かれ》の心《こゝろ》を推測《すゐそく》する程《ほど》鋭敏《えいびん》な目《め》を有《も》つて居《ゐ》なかつた。彼《かれ》は自棄《やけ》に態《わざ》と繃帶《ほうたい》の手《て》を抱《だ》いて數日間《すう
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