》へ出《で》ては只《たゞ》首《くび》を俛《うなだ》れた。卯平《うへい》は凝然《ぢつ》と横《よこ》を向《む》いて勘次《かんじ》をちらりとも見《み》なかつた。彼《かれ》は從來《これまで》とは容子《ようす》が幾分《いくぶん》違《ちが》つて居《ゐ》た。彼《かれ》は其《そ》の癖《くせ》の舌《した》を鳴《な》らして居《ゐ》たが
「畜生奴《ちきしやうめ》」と只《たゞ》一言《ひとこと》いつた。さうして又《また》暫《しばら》く間《あひだ》を措《お》いて
「畜生《ちきしやう》つちはれんの口惜《くや》しけりや、口惜《くや》しいちつて見《み》た方《はう》がえゝ、原因《もと》はつちへば己奴《うの》が手出《てだ》しすんのが惡《わ》りいんだから」と低《ひく》く然《しか》も鋭《するど》く彼《かれ》は呟《つぶや》いて、芒《すゝき》で裂《さ》いたやうに口《くち》をぎつと閉《と》ぢて畢《しま》つた。勘次《かんじ》は刈《か》られた草《くさ》の如《ごと》く悄然《せうぜん》とした。
「こつちのおとつゝあん、そんぢや仕《し》やうねえよ、先刻《さつき》も俺《お》れそつから不承《ふしよう》してくろうつて堅《かた》しく云《ゆ》つたんだつ
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