ら決《けつ》して形式的《けいしきてき》な和睦《わぼく》を希望《きばう》しなかつた筈《はず》である。彼《かれ》は反目《はんもく》して居《ゐ》るだけならば久《ひさ》しく馴《な》れて居《ゐ》た。然《しか》し彼《かれ》は從來《じゆうらい》嘗《かつ》てなかつた卯平《うへい》の行爲《かうゐ》に始《はじ》めて恐怖心《きようふしん》を懷《いだ》いたのであつた。
「そんぢやねえおとつゝあん、お互《たげえ》に斯《か》う根《ね》に持《も》たねえことにしてね、勘次《かんじ》さんおめえも忙《いそが》しくつて手《てえ》つけねえでたかも知《し》んねえが、麹《かうぢ》も鹽《しほ》まで切《き》つて有《あ》るつちんだから、後《あと》は豆《まめ》※[#「赭のつくり/火」、第3水準1−87−52]《に》るだけのことだし、味噌《みそ》は搗《つ》くことにしてな、斯《か》うえゝ鹽梅《あんべえ》にしてくれさつせえね、先刻《さつき》もいふ通《とほ》りそつちだこつちだねえやうにしなくちやねえ、こつちのおとつゝあん」南《みなみ》の亭主《ていしゆ》は二人《ふたり》を見較《みくら》べるやうにしていつた。勘次《かんじ》は卯平《うへい》の前《まへ
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