つた雜木林《ざふきばやし》の上《うへ》に傾《かたむ》かうとした頃《ころ》であつた。彼《かれ》は只《たゞ》其《その》儘《まゝ》に自分《じぶん》の怪我《けが》と其《その》事實《じじつ》とを掩《おほ》うて置《お》くのが残《のこ》り惜《をし》い心持《こゝろもち》がした。それで彼《かれ》は其《そ》の足《あし》で直《すぐ》に南《みなみ》の家《いへ》へ行《い》つた。脚絆《きやはん》と草鞋《わらぢ》とで身《み》を堅《かた》めた勘次《かんじ》の容子《ようす》を不審《ふしん》に思《おも》つた南《みなみ》の亭主《ていしゆ》へ勘次《かんじ》は突然《とつぜん》訴《うつた》へるやうにいつた。
「俺《お》ら、爺樣《ぢいさま》に鐵火箸《かなひばし》で打《ぶ》つ飛《と》ばさつて、骨接《ほねつぎ》へ行《い》つて來《き》た處《とこ》だが、忙《いそが》し處《ところ》酷《ひで》え目《め》に逢《あ》つちやつた」勘次《かんじ》はそれでも口《くち》が澁《しぶ》つて思《おも》ふ樣《やう》にいへなかつた。南《みなみ》の亭主《ていしゆ》は態々《わざ/\》來《き》て噺《はなし》をされては棄《す》てゝ顧《かへり》みぬことも出來《でき》なかつた
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