あつたからである。稻《いね》はぼつ/\と簇《むらが》つて居《ゐ》る野茨《のばら》の株《かぶ》を除《のぞ》いて悉《こと/″\》く擴《ひろ》げられてある。野茨《のばら》の葉《は》はもう落《お》ちて畢《しま》つて、小《ちひ》さな枝《えだ》の先《さき》には赤《あか》いつやゝかな實《み》が一つづゝ翳《かざ》されて居《ゐ》る。草刈《くさかり》の鎌《かま》を遁《のが》れて確乎《しつか》と其《その》株《かぶ》の根《ね》に縋《すが》つた嫁菜《よめな》の花《はな》が刺立《とげだ》つた枝《えだ》に倚《よ》り掛《かゝ》りながらしつとりと朝《あさ》の濕《うるほ》ひを帶《おび》て居《ゐ》る。濡《ぬ》れた稻《いね》の臭《にほひ》が勘次《かんじ》の鼻《はな》を衝《つ》いた。螽《いなご》がぱら/\と足《あし》の響《ひゞき》に連《つ》れて稻《いね》を渉《わた》つて遁《にげ》た。彼《かれ》は其《その》干《ほ》された稻《いね》の穗先《ほさき》を攫《つか》んで籾《もみ》の幾粒《いくつぶ》かを手《て》に扱《しご》いて見《み》た。彼《かれ》は更《さら》に其《その》籾粒《もみつぶ》を齒《は》で噛《か》んで見《み》た。彼《かれ》は夫《
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