》の目《め》を放《はな》たないのである。孰《いづ》れにしても小《ちひ》さな船《ふね》は今《いま》冷《つめ》たい朝《あさ》の靜《しづ》けさを保《たもつ》て居《ゐ》るのである。只《たゞ》遙《はるか》に隔《へだ》つた村落《むら》の木立《こだち》の梢《こずゑ》から騰《のぼ》る炊煙《すゐえん》が冴《さ》えた冷《つめ》たい空《そら》に吸《す》ひこまれて居《ゐ》るのみで、其《そ》の小《ちひ》さな船《ふね》が中心點《ちうしんてん》をなして勘次《かんじ》の目《め》には一つも動《うご》く物《もの》を見《み》なかつた。彼《かれ》は暫《しばら》く又《また》凝然《ぢつ》として上流《じやうりう》の小船《こぶね》を見《み》て居《ゐ》た。彼《かれ》は氣《き》がついた時《とき》土手《どて》を一|散《さん》に北《きた》へ急《いそ》いだ。土手《どて》は軈《やが》て水田《すゐでん》に添《そ》うてうね/\と遠《とほ》く走《はし》つて居《ゐ》る。土手《どて》の道幅《みちはゞ》が狹《せま》くなつた。それは刈《か》られてぐつしやりと濕《しめ》つて居《ゐ》る稻《いね》が土手《どて》の芝《しば》の上《うへ》一|杯《ぱい》に干《ほ》されて
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