でも曳《ひ》ける丈《だけ》曳《ひ》くべ」勘次《かんじ》はおつぎを連《つ》れて出《で》た。冬至《とうじ》になるまで畑《はたけ》の菜《な》を打棄《うつちや》つて置《お》くものは村《むら》には一人《ひとり》もないのであつた。勘次《かんじ》は荷車《にぐるま》を借《か》りて黄昏《ひくれ》までに二|車《くるま》挽《ひ》いた。青菜《あをな》の下葉《したば》はもうよく/\黄色《きいろ》に枯《か》れて居《ゐ》た。お品《しな》は二人《ふたり》を出《だ》し薄暗《うすぐら》くなつた家《いへ》にぼつさりして居《ゐ》ても畑《はたけ》の收穫《しうくわく》を思案《しあん》して寂《さび》しい不足《ふそく》を感《かん》じはしなかつた。
夏季《かき》の忙《いそが》しいさうして野菜《やさい》の缺乏《けつばふ》した時《とき》には彼等《かれら》の唯一《ゆゐいつ》の副食物《ふくしよくぶつ》が鹽《しほ》を噛《か》むやうな漬物《つけもの》に限《かぎ》られて居《ゐ》るので、大根《だいこ》でも青菜《あをな》でも比較的《ひかくてき》餘計《よけい》な蓄《たくは》へをすることが彼等《かれら》には重大《ぢゆうだい》な條件《でうけん》の一《ひと》
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