ぢやう》した。さうして資本《もとで》を引《ひ》いても幾《いく》らかの剩餘《あまり》があつたので
「勘次《かんじ》さん思《おも》ひの外《ほか》だつけな、まあだあと餘程《よつぽど》あんべえか」といつた。
「幾《いく》らでもねえな、はあ此丈《これだけ》ぢや又《また》出《で》る程《ほど》のこつてもあんめえよ」勘次《かんじ》はいつた。お品《しな》は自分《じぶん》の手《て》で錢《ぜに》を蒲團《ふとん》の下《した》へ入《い》れた。其《そ》の日《ひ》お品《しな》は勘次《かんじ》を出《だ》して情《なさけ》ないやうな心持《こゝろもち》がして居《ゐ》たのであるが、思《おも》つたよりは商《あきなひ》をして來《き》て呉《く》れたので一|日《にち》の不足《ふそく》が全《まつた》く恢復《くわいふく》された。さうして
「菜《な》は畑《はたけ》へ置《お》きつ放《ぱな》しだつけべな」勘次《かんじ》がいつた時《とき》お品《しな》も驚《おどろ》いたやうに
「ほんにさうだつけなまあ、後《おく》れつちやつたつけなあ、俺《お》ら忘《わす》れてたつけが大丈夫《だえぢよぶ》だんべかなあ」といつた。
「そんぢや俺《お》ら今《いま》つから
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