いだ。夜《よる》は寂《さび》しさに凡《すべ》ての梢《こずゑ》が相《あひ》耳語《さゝや》きつゝ餘計《よけい》に騷《さわ》いだ。まだ暑《あつ》い空氣《くうき》を冷《つめ》たくしつゝ豪雨《がうう》が更《さら》に幾日《いくにち》か草木《くさき》の葉《は》を苛《いぢ》めては降《ふ》つて/\又《また》降《ふ》つた。例年《れいねん》の如《ごと》き季節《きせつ》の洪水《こうずゐ》が残酷《ざんこく》に河川《かせん》の沿岸《えんがん》を舐《ねぶ》つた。洪水《こうずゐ》の去《さ》つた後《あと》は、丁度《ちやうど》過激《くわげき》な精神《せいしん》の疲勞《ひらう》から俄《にはか》に老衰《らうすゐ》した者《もの》の如《ごと》く、半死《はんし》の状態《じやうたい》を呈《てい》した草木《さうもく》は皆《みな》白髮《はくはつ》に變《へん》じて其《そ》の力《ちから》ない葉先《はさき》を秋風《あきかぜ》に吹《ふ》き靡《なび》かされた。鬼怒川《きぬがは》の土手《どて》に繁茂《はんも》した篠《しの》の根《ね》に纏《まつ》はつて居《ゐ》る短《みじか》い鴨跖草《つゆぐさ》も葉《は》から莖《くき》から泥《どろ》に塗《まみ》れて居《
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