だえぢよぶ》有《あ》ると思《おも》つてたつけがなよ、それからこつちの桶《をけ》の糠《ぬか》がえゝんだよ、そつちのがにや房州砂《ばうしうずな》交《まじ》つてんだから」お品《しな》はいつた。
「おうい」勘次《かんじ》はいつて、
「房州砂《ばうしうずな》でも何《なん》でも構《かま》あめえ、どうで糠《ぬか》喰《く》ふんぢやあんめえし、それにこつちなちつと凝結《こご》つてら」
「勘次《かんじ》さんそんでも入《せ》えんなよ、毒《どく》だつちんだから、俺《おれ》折角《せつかく》別《べつ》にしてたんだから」お品《しな》は少《すこ》し身《み》を起《おこ》し掛《か》けていつた。
「さうかそんぢやさうすべよ」それから鹽《しほ》を改《あらた》めて見《み》て
「どうして此《こ》れだけ使《つか》へ切《き》れるもんけえ」と勘次《かんじ》はいつた。お品《しな》は勘次《かんじ》が梯子《はしご》を掛《か》けて一《ひと》つ/\に大根《だいこ》を外《はず》すのも小糠《こぬか》を筵《むしろ》へ量《はか》るのも白《しろ》い鹽《しほ》を小糠《こぬか》へ交《ま》ぜるのも滿足氣《まんぞくげ》に見《み》て居《ゐ》た。
 お品《しな》は勘
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