くつちやなんねえんだから、其《そ》の積《つもり》で居《ゐ》てくんなくつちや、此《こ》んで心持《こゝろもち》ぢや餘《あんま》り面白《おもしろ》かねえかんな、毎日《まいにち》苦蟲《にがむし》喰《く》つ潰《ちや》したやうな面《つら》つきばかしされたんぢや厭《や》んなつちまあぞ、本當《ほんたう》に」
「そりやさうにも何《なん》にもよ、他人《たにん》でせえこんで軟《やつ》けえ言辭《ことば》でも掛《か》けられつと、後《あと》ぢや欲《ほ》しく成《な》るやうな物《もの》でも出《だ》す料簡《れうけん》にもなるもんだかんなあ」おつたは斯《か》ういひながら先刻《さつき》から※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]《とり》の塒《とや》の下《した》に在《あ》る二|俵《へう》の俵《たわら》へ目《め》を注《そゝ》いで居《ゐ》た。
「そんだがおめえもたえした働《はたら》きだと見《め》えんな、かうえに俵《たわら》までちやんとして、大概《てえげえ》な百姓《ひやくしやう》ぢやおめえ此《この》手《て》にや行《い》かねえぞ、俺《お》ら世辭《つや》いふわけぢやねえが」
 勘次《かんじ》は漸《やうや》く噺《はなし》に吊《つ》り込
前へ 次へ
全956ページ中632ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング