》るのだとは知《し》らないで、寧《むし》ろ老人《らうじん》に通有《つういう》な倦怠《けんたい》に伴《ともな》ふ睡眠《すゐみん》を貪《むさぼ》つて居《ゐ》るのだらう位《ぐらゐ》に見《み》るのであつた。枕元《まくらもと》の火鉢《ひばち》は戸口《とぐち》からでは彼《かれ》の薄《うす》い白髮《しらが》の頭《あたま》を掩《おほ》うて居《ゐ》た。彼《かれ》はさうかと思《おも》ふと起《お》きて一|心《しん》に草鞋《わらぢ》を作《つく》ることがある。彼《かれ》の仕事《しごと》は老衰《らうすゐ》して面倒《めんだう》な樣《やう》であるが、其《そ》の天性《てんせい》の器用《きよう》は失《うしな》はれなかつた。彼《かれ》は五|足《そく》づつを一《ひと》つに束《たば》ねた草鞋《わらぢ》とそれから繩《なは》が一荷物《ひとにもつ》に成《な》ると大風呂敷《おほぶろしき》で脊負《しよ》つて出《で》た。それは大抵《たいてい》暖《あたゝ》かな日《ひ》に限《かぎ》られて居《ゐ》るのであつたが、其《その》時《とき》は彼《かれ》の大《おほ》きな躯幹《からだ》はきりゝと帶《おび》を締《し》めて、股引《もゝひき》の上《うへ》に高《た
前へ 次へ
全956ページ中609ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング