たうぐは》を村落《むら》の店《みせ》の軒下《のきした》へ卸《おろ》して一|杯《ぱい》を傾《かたむ》けて來《く》るのであるが、嘗《かつ》て自分《じぶん》の家《うち》に運《はこ》んだこともなければ臭《くさ》い息《いき》を吐《は》く間《あひだ》は卯平《うへい》へ顏《かほ》を合《あは》せたこともなかつた。
 卯平《うへい》は腰《こし》の疼痛《いたみ》に惱《なや》まされて、餘計《よけい》にかさ/\と乾《から》びて硬《こは》ばつて居《ゐ》る手《て》を動《うご》かし難《がた》くなると彼《かれ》は一|塊《くわい》の※[#「火+畏」、第3水準1−87−57]《おき》もない火鉢《ひばち》を枕元《まくらもと》に置《お》いて凝然《ぢつ》と蒲團《ふとん》を被《かぶ》つた儘《まゝ》である。彼《かれ》はさうでなくても嘗《かつ》てはき/\と口《くち》を利《き》いたこともなく、殊更《ことさら》勘次《かんじ》に對《たい》しては皺《しな》びた顏《かほ》の筋肉《きんにく》を更《さら》に蹙《しが》めて居《ゐ》るので、恁《か》うして凝然《ぢつ》として居《ゐ》ることをも勘次《かんじ》は僂麻質斯《レウマチス》が惱《なや》まして居《ゐ
前へ 次へ
全956ページ中608ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング