と首《くび》を擡《もた》げ始《はじ》めることもあるのであつたが、おつぎの言辭《ことば》はいつでも其《そ》の火《ひ》を消《け》し止《と》める一|杯《ぱい》の水《みづ》なのであつた。おつぎはどうかすると目《め》の邊《へん》に在《あ》る雀斑《そばかす》が一|種《しゆ》の嬌態《しな》を作《つく》つて甘《あま》えたやうな口《くち》の利方《きゝかた》をするのであつた。
おつぎは勘次《かんじ》の居《ゐ》ない時《とき》は牝鷄《めんどり》が消魂《けたゝま》しく鳴《な》いて出《で》れば直《す》ぐに塒《とや》を覗《のぞ》いて暖《あたゝ》かい卵《たまご》の一《ひと》つを採《と》つて卯平《うへい》の筵《むしろ》へ轉《ころ》がしてやることもあつた。おつぎは勘次《かんじ》の敏捷《びんせふ》な目《め》を欺《あざむ》くには此《これ》だけの深《ふか》い注意《ちうい》を拂《はら》はなければならなかつた。それも稀《まれ》なことで數《かず》は必《かなら》ず一《ひと》つに限《かぎ》られて居《ゐ》た。然《しか》し卯平《うへい》は其《そ》の僅少《きんせう》な厚意《こうい》に對《たい》して窪《くぼ》んだ茶色《ちやいろ》の眼《め》を蹙
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