ることがある。横《よこ》に轉《ころ》がした臼《うす》を前《まへ》に据《す》ゑて小麥《こむぎ》を攫《つか》んでは穗先《ほさき》を其《そ》の臼《うす》の腹《はら》に叩《たゝ》きつけると種《たね》がぼろ/\と向《むかふ》へ落《お》ちる。のつそりとして悠長《いうちやう》な卯平《うへい》は壯時《さうじ》に熟《じゆく》して居《ゐ》た仕事《しごと》の呼吸《こきふ》で大《おほ》きな手《て》が肩《かた》から打《う》ち下《おろ》す時《とき》、まだ相當《さうたう》に捗《はか》どるのであつた。彼《かれ》は恁《か》うしてぐる/\と傭《やと》はれて歩《ある》きながら綺麗《きれい》な花《はな》が咲《さ》いて居《ゐ》るのを見《み》ると種《たね》を貰《もら》つたり根分《ねわ》けをして貰《もら》つたりして庭先《にはさき》の栗《くり》の木《き》の側《そば》や井戸端《ゐどばた》に近《ちか》く植《う》ゑた。
彼《かれ》は忙《いそが》しい仕事《しごと》が畢《しまひ》になつた時《とき》即《すなは》ち稻刈《いねかり》から稻扱《いねこき》からさうして籾《もみ》すりも濟《す》んで彼《かれ》が得意《とくい》の俵編《たわらあ》みもなくなつ
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