《きせつ》は雨《あめ》に濕《しめ》つた土《つち》へ稀《まれ》にかつと暑《あつ》い日《ひ》の光《ひかり》が投《な》げられて、日歸《ひがへ》りの空《そら》が強健《きやうけん》な百姓《ひやくしやう》の肌膚《はだ》にさへぞく/\と空氣《くうき》の冷《ひやゝ》かさを感《かん》ぜしめて、更《さら》にじめ/\と霧《きり》のやうな雨《あめ》が斜《なゝめ》に降《ふ》り掛《か》けては軟《やはら》かに首《くび》を擡《もた》げはじめた麥《むぎ》の穗《ほ》の芒《のげ》に微細《びさい》な水球《すゐきう》を宿《やど》して白《しろ》い穗先《ほさき》を更《さら》に白《しろ》くして世間《せけん》が只《たゞ》濕《しめ》つぽく成《な》つたかと思《おも》ふと、又《また》かつと日《ひ》の光《ひかり》が射《さ》して、空洞《からり》と明《あか》るく成《な》つて畑《はたけ》にはしどろに倒《たふ》れ掛《かけ》た豌豆《ゑんどう》の花《はな》も心《こゝろ》よげに首《くび》を擡《もた》げて微笑《びせう》する。さうすると畑《はた》を包《つゝ》む遠《とほ》い近《ちか》い林《はやし》には嫩葉《わかば》の隙間《すきま》から少《すくな》い日《ひ》の光《
前へ 次へ
全956ページ中589ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング