。彼《かれ》は手《て》もとの凡《すべ》てが不自由《ふじいう》だらけな生活《せいくわつ》に還《かへ》つて來《き》たとはいふものゝ衰《おとろ》へた身體《からだ》を自分《じぶん》から毎夜《まいよ》苛《いぢ》める樣《やう》に引《ひ》き立《た》てゝ居《ゐ》る奉公《ほうこう》の務《つと》めをして居《ゐ》た當時《たうじ》と比《くら》べて、寧《むし》ろ相《あひ》反《はん》した放縱《はうじう》な日頃《ひごろ》が自然《しぜん》に精神《せいしん》にも肉體《にくたい》にも急激《にはか》な休養《きうやう》を與《あた》へたので彼《かれ》は自分《じぶん》ながら一|時《じ》はげつそりと衰《おとろ》へた樣《やう》にも思《おも》はれて、懶《ものう》さに堪《た》へぬ樣《やう》に成《な》つたがそれでも其《そ》の休養《きうやう》の爲《ため》に幾《いく》らづゝでも持病《ぢびやう》の苦《くる》しみを減《げん》じたので、さういふ理由《わけ》を知《し》らない彼《かれ》は、此《こ》の分《ぶん》では二三|年《ねん》はまだ野田《のだ》に居《ゐ》た方《はう》が増《ま》しであつたと後悔《こうくわい》の念《ねん》が湧《わ》くこともあつた。
季節
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