か》めなかつた。
「爺《ぢい》がにや佳味《うま》かあんめえ、おとつゝあはまつと丁寧《ていねい》に打《ぶ》てばえゝのに疎忽敷《そゝつかしい》から」おつぎはどうかすると椀《わん》から落《お》ち相《さう》になる蕎麥《そば》を啜《すゝ》りながら卯平《うへい》の手《て》もとを見《み》ていつた。
「どうせ俺《お》らあ、佳味《うめ》えつたつてさうだに減《へ》る程《ほど》でも食《く》ふべぢやなし、管《かま》やしねえが」卯平《うへい》は皮肉《ひにく》らしい口調《くてう》でいつた。勘次《かんじ》は只《たゞ》默《だま》つてむしや/\と不味相《まづさう》に噛《か》んだ。
恁《か》うして居《ゐ》る間《あひだ》に春《はる》の彼岸《ひがん》が來《き》て日南《ひなた》の垣根《かきね》には耳菜草《みゝなぐさ》や其《その》他《た》の雜草《ざつさう》が勢《いきほひ》よく出《で》だして桑畑《くはばたけ》の畦間《うねま》には冬《ふゆ》を越《こ》した薺《なづな》が線香《せんかう》の樣《やう》な薹《たう》を擡《もた》げて、其《そ》の先《さき》に粉米《こごめ》に似《に》た花《はな》を聚《あつ》めた。そつけない杉《すぎ》の木《き》ま
前へ
次へ
全956ページ中585ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング