がないのみでなく、只管《ひたすら》或《ある》物《もの》を隱蔽《いんぺい》しようとするやうな恐怖《きようふ》の状態《じやうたい》を現《あらは》して居《ゐ》ながら、陰《かげ》では爪《つめ》の垢《あか》程《ほど》のことを目《め》に止《とめ》て獨《ひとり》でぶつ/\として居《ゐ》た。勘次《かんじ》は只《たゞ》一|度《ど》おつぎが自分《じぶん》の留守《るす》に卯平《うへい》の爲《ため》に其《そ》の餅《もち》の僅《わづか》を燒《や》いてやつたのをすら發見《はつけん》しておつぎを叱《しか》つた。
「そんだつておとつゝあは、よき欲《ほ》しいつちから出《だ》して俺《お》れと燒《や》いたんだあ、食《く》へたくなつちやしやうあんめえな」おつぎは甘《あま》えた舌《した》で言辭《ことば》は荒《あら》く勘次《かんじ》を窘《たしな》めた。勘次《かんじ》は其《そ》の以上《いじやう》を越《こ》して再《ふたゝ》びおつぎを叱《しか》ることは能《よ》くしなかつた。僅《わづか》な餅《もち》はさういふことで幾《いく》らも減《へ》らないのに時間《じかん》が經《た》つて、寒冷《かんれい》な空氣《くうき》の爲《ため》に陸稻《をかぼ》の
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