》し煮《に》れば直《す》ぐくた/\に溶《と》けようとする。卯平《うへい》には却《かへつ》てそれが善《よ》いので、彼《かれ》はさうして呉《く》れるおつぎを何處《どこ》までも嬉《うれ》しく思《おも》つた。彼《かれ》は只《たゞ》一つでも善《い》いから始終《しじゆう》汁《しる》の中《なか》で必《かなら》ずくつ/\と煮《に》て欲《ほ》しかつた。然《しか》しそれは一同《みんな》で祝《いは》ふ時《とき》のみで、それさへ卯平《うへい》が只獨《ただひとり》ゆつくりと味《あぢは》ふには焙烙《はうろく》に乘《の》せる分量《ぶんりやう》が餘《あま》りに足《た》らなかつた。餅《もち》は四|角《かく》に庖丁《はうちやう》を入《い》れると直《す》ぐに勘次《かんじ》は自分《じぶん》の枕元《まくらもと》の桶《をけ》へ藏《しま》つて無斷《むだん》にはおつぎにさへ出《だ》すことを許容《ゆる》さないのであつた。勘次《かんじ》は假令《たとひ》什※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《どんな》ことがあつても面《まのあた》り卯平《うへい》に向《むか》つて一|言《ごん》でも呟《つぶや》いたこと
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