し透《とほ》す朝日《あさひ》にきら/\と光《ひか》つた。白《しろ》い切干《きりぼし》は蒸《む》さずに干《ほ》したのであつた。切干《きりぼし》は雨《あめ》が降《ふ》らねば埃《ほこり》だらけに成《な》らうが芥《ごみ》が交《まじ》らうが晝《ひる》も夜《よる》も筵《むしろ》は敷《し》き放《はな》しである。
 勘次《かんじ》は霜柱《しもばしら》の立《たつ》てる小徑《こみち》を南《みなみ》へ行《い》つた。昨夜《ゆうべ》遲《おそ》かつたことやら何《なに》やら噺《はなし》をして暇《ひま》どつた。庭先《にはさき》から續《つゞ》く小《ちひ》さな桑畑《くはばたけ》の向《むかふ》に家《いへ》が見《み》えるので、平生《へいぜい》それを勘次《かんじ》の家《いへ》でも唯《たゞ》南《みなみ》とのみいつて居《ゐ》る。彼《かれ》が薦《こも》つくこ[#「薦《こも》つくこ」に傍点]を擔《かつ》いで歸《かへ》つて來《き》た時《とき》は日向《ひなた》の霜《しも》が少《すこ》し解《と》けて粘《ねば》ついて居《ゐ》た。お品《しな》は勘次《かんじ》が一寸《ちよつと》の間《ま》居《ゐ》なく成《な》つたので酷《ひど》く寂《さび》しかつた。
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