が揣《さす》つてやんべなんていふもんだから少しもやつてくろつて云《ゆ》つた處《ところ》だよ、こんぢや二三日《にさんち》も過《す》ぎたら勘次《かんじ》さんは又《また》行《い》けべえよ」お品《しな》は快《こゝろ》よげにいつた。
「今夜《こんや》はひどく心持《こゝろもち》えゝんだよ、えゝよ本當《ほんたう》だよ勘次《かんじ》さん、お前《めえ》草臥《くたびれ》たんべえな」更《さら》にお品《しな》は威勢《ゐせい》がついていつた。
夜《よ》は深《ふ》けた。外《そと》の闇《やみ》は氷《こほ》つたかと思《おも》ふやうに只《たゞ》しんとした。蒟蒻《こんにやく》の水《みづ》にも紙《かみ》の如《ごと》き氷《こほり》が閉《と》ぢた。
三
次《つぎ》の朝《あさ》霜《しも》は白《しろ》く庭葢《にはぶた》の藁《わら》におりた。切干《きりぼし》の筵《むしろ》は三枚《さんまい》ばかり其《その》庭葢《にはぶた》の上《うへ》に敷《し》いた儘《まゝ》で、切干《きりぼし》には氷《こほり》を粉末《ふんまつ》にしたやうな霜《しも》が凝《こ》つて居《ゐ》て、東《ひがし》の森《もり》の隙間《すきま》から射《さ》
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