でき》たかあ」與吉《よきち》は卯平《うへい》の腕《うで》へ小《ちひ》さな手《て》を掛《か》けて覗《のぞ》く樣《やう》にしていつた。
「よき、何《なん》でえ汝《わ》りや、お飯《まんま》くつたばかしで」おつぎは與吉《よきち》を叱《しか》つた。
「汝《われ》も喰《く》へ」卯平《うへい》は蕎麥掻《そばがき》を分《わ》けてやつた。彼《かれ》はさうして更《さら》に後《あと》の一|杯《ぱい》を喫《きつ》して其《その》茶碗《ちやわん》へ湯《ゆ》を汲《く》んで飮《の》んだ。藥罐《やくわん》は輕《かる》くなつた。勘次《かんじ》は冷《つめ》たい手《て》を火《ひ》にも翳《かざ》さないで殊更《ことさら》に遠《とほ》く卯平《うへい》の側《そば》を離《はな》れて蹙《しか》めた酷《ひど》い顏《かほ》に恐怖《きようふ》の相《さう》を表《あら》はして唯《たゞ》凝然《ぢつ》と默《だま》つて居《ゐ》た。冷《つめ》たい三|人《にん》は夜《よる》の温度《をんど》のしん/\と降下《かうか》しつゝあるのを感《かん》じた。
一八
卯平《うへい》は久振《ひさしぶり》で故郷《こきやう》に歳《とし》を迎《むか》へた。
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