ち》の前《まへ》にどさりと坐《すわ》つた儘《まゝ》、例《れい》の蟠《わだかま》りの有相《ありさう》な容子《ようす》をしては右手《うしゆ》の人《ひと》さし指《ゆび》を掛《か》けてぎつと握《にぎ》つた煙管《きせる》を横《よこ》に噛《か》んで居《ゐ》た。
「おつう、汝《われ》まつと此處《ここ》さ火《ひい》とつてくんねえか」卯平《うへい》はそれだけいつて依然《いぜん》として火《ひ》もない煙管《きせる》を噛《か》んだ。おつぎは麁朶《そだ》を折《を》つて藥罐《やくわん》の下《した》を燃《も》やしてやつた。藥罐《やくわん》が鳴《な》り出《だ》した時《とき》卯平《うへい》は懶《ものう》さ相《さう》な身體《からだ》をゆつさりと起《おこ》して其處《そこ》らを頻《しき》りに探《さが》しはじめた。
「何《なん》でえ爺《ぢい》」おつぎは直《すぐ》に聞《き》いた。
「うむ、袋《ふくろ》よ」卯平《うへい》は極《きは》めて簡單《かんたん》にいつた。
「此《こ》れだんべ爺《ぢい》、蕎麥《そば》つ粉《こな》へえつてたのな、俺《お》らどうしたんだか知《し》んねえから桶《をけ》ん中《なか》さ明《あ》けて置《お》いたつきや、そ
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