した。
「おつう、汝《われ》此《こ》の蕎麥《そば》つ粉《こな》出《だ》して遣《や》つたのか」勘次《かんじ》はおつぎに聞《き》いた。
「俺《お》ら出《だ》すめえな」おつぎは何《なに》も解《かい》せぬ容子《ようす》でいつた。
「蕎麥《そば》ツ掻《かき》なんぞにしたつて詰《つま》りやしねえ、碌《ろく》に有《あ》りもしねえ粉《こな》だ」彼《かれ》は呟《つぶや》いた。それから彼《かれ》は又《また》
「此《こ》れも、はあ、有《あ》りやしねえ」醤油《しやうゆ》の罎《びん》を透《すか》して其《それ》から振《ふ》つて見《み》ていつた。
「おとつゝあ、それにやねえのがんだぞ」おつぎは打《う》ち消《け》した。
「えゝから、此《こ》れつ切《きり》ぢやきかねえのがんだから」勘次《かんじ》はおつぎを呶鳴《どな》りつけた。彼《かれ》は更《さら》に袋《ふくろ》の蕎麥粉《そばこ》を桶《をけ》へ明《あ》けて畢《しま》つて猶《なほ》ぶつ/\して居《ゐ》た。手《て》ランプが薄闇《うすぐら》く點《とも》された時《とき》卯平《うへい》はのつそり歸《かへ》つて來《き》た。彼《かれ》は膳《ぜん》に向《むか》はうともしないが火鉢《ひば
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