えないのである。以前《いぜん》の卯平《うへい》であればさういふ味《あぢ》が普通《ふつう》で且《かつ》佳味《うま》く感《かん》ずる筈《はず》なのであるが、數年來《すうねんらい》佳味《うま》い醤油《しやうゆ》を惜氣《をしげ》もなく使用《しよう》して來《き》た口《くち》には恐《おそ》ろしい不味《まづ》さを感《かん》ぜずには居《ゐ》られなかつた。それでも蕎麥掻《そばがき》は身體《からだ》が暖《あたゝ》まる樣《やう》で快《こゝろよ》かつた。彼《かれ》はたべた後《あと》の茶碗《ちやわん》へ沸《たぎ》つた湯《ゆ》を注《つ》いで箸《はし》で茶碗《ちやわん》の内側《うちがは》を落《おと》して其《そ》の儘《まゝ》棚《たな》へ置《お》いた。さうしては彼《かれ》は毎日《まいにち》の仕事《しごと》のやうに外《そと》へ出《で》た。勘次《かんじ》は一|日《にち》の仕事《しごと》を畢《を》へて歸《かへ》つて來《き》ては目敏《めざと》く卯平《うへい》の茶碗《ちやわん》を見《み》て不審《ふしん》に思《おも》つて桶《をけ》の蓋《ふた》をとつて見《み》た。遂《つひ》に彼《かれ》は卯平《うへい》の袋《ふくろ》を發見《はつけん》
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