《ゐ》た。彼《かれ》は火鉢《ひばち》の前《まへ》に胡坐《あぐら》を掻《か》いた儘《まゝ》一|言《ごん》もいはない。おつぎが甘《あま》えた舌《した》でいつても返辭《へんじ》もしなかつた。勘次《かんじ》も卯平《うへい》の側《そば》を退去《すさ》つて只《たゞ》恐《おそ》ろしく僻《ひが》んだ容子《ようす》をして居《ゐ》た。おつぎも遂《つひ》にいはなかつた。與吉《よきち》は只《たゞ》ぐつすりと眠《ねむ》つて居《ゐ》た。
驚怖《きやうふ》の餘《あま》り物陰《ものかげ》に凝然《ぢつ》と潜伏《せんぷく》して居《ゐ》た鷄《とり》は次《つぎ》の朝《あさ》漸《やうや》く他《た》の鷄《とり》の群《むれ》に交《まじ》つて歩《ある》いたけれど幾《いく》らかまだ跛足《びつこ》曳《ひ》いて居《ゐ》た。勘次《かんじ》は態《わざ》と卯平《うへい》へ見《み》せつける樣《やう》に其《そ》の夜《よ》塒《とや》に就《つ》いた時《とき》其《そ》の鷄《とり》を籠《かご》に伏《ふ》せて、戸口《とぐち》の庭葢《にはぶた》の上《うへ》に三|日《か》も四|日《か》も置《お》いたのであつた。卯平《うへい》は捲《ま》きつけた紙《かみ》へ煙脂《
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