「爺《ぢい》打《ぶ》つとばしたんだわ」與吉《よきち》は勘次《かんじ》へいつた。
「どうしてだ」勘次《かんじ》は驚《おどろ》いた眼《め》を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》つて慌《あわ》てゝ聞《き》いた。
「座敷《ざしき》へ上《あが》つたら煙管《きせる》打《ぶ》つゝけたんだ。そんで俺《お》れ煙管《きせる》とつてやつたんだ」勘次《かんじ》は餌料《ゑさ》を撒《ま》いて鷄《とり》を聚《あつ》めて見《み》た。一|旦《たん》塒《とや》に就《つ》いた鷄《とり》が餌料《ゑさ》を見《み》てはみんな籃《かご》からばさ/\と飛《と》びおりてこツこツと鳴《な》きながら爪《つめ》で掻《か》つ拂《ぱ》き/\爭《あらそ》うて啄《つゝ》いた。勘次《かんじ》は遂《つひ》に鷄《とり》の數《かず》の不足《ふそく》して居《ゐ》ることを確《たしか》めざるを得《え》なかつた。卯平《うへい》は例《れい》の如《ごと》く豆腐《とうふ》でコツプ酒《ざけ》を傾《かたむ》けて來《き》て晩餐《ばんさん》を欲《ほつ》しなかつた。彼《かれ》の皺《しわ》深《ふか》く刻《きざ》んだ頬《ほゝ》にほんのりと赤味《あかみ》を帶《お》びて居
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